FEZ小説 独立戦争編

ライオネス・レノテール・ランス――第一部隊を率いるリーダーであり、フィリップ・スコット・ランスの父である。
彼が率いていた第一部隊はハンナハンナ島で壊滅し、彼もまたそこで命を落とした。

今、この世界メルファリアは、エスセティア大陸を中心として、4つの国による戦争が勃発している。
戦争は膠着気味の状態になってはいるものの、いつ過激化するか分からない状況である。

フィリップ・スコット・ランス……フィルと呼ばれている――彼が所属しているのはゲブランド帝国。
中央大陸南東部から行けるストリクタ大陸に首都を構え、中央大陸南西端のエイケルナル大陸を占領しており、
さらに中央大陸の領土の三分の一を支配している、強力かつ巨大な国家であった。

しかし、ゲブランド帝国が支配するエイケルナル大陸にて、傭兵将軍ウィンビーンを筆頭とし、
ゲブランドに存在する多くの旧王家らによる反乱軍が結成された。
それを鎮圧するべく、フィルは彼の父と共に反乱軍と戦っている。いや、戦っていた。

フィルの父、ライオネスを隊長とする部隊……即ち、『帝国正規軍第一部隊』は、
中央大陸とエイケルナル大陸を繋ぐ要所、ハンナハンナ島を防衛していたが、
その地域における戦闘で敵の策に嵌ってしまい、彼は命を落とした。
部隊も、壊滅的な被害を受けたため、現在は事実上解散状態となっている。

その戦場では、ライオネスの息子であるフィルも戦っていた。
そこからフィルが何故生き残ったのかは、彼自身よく分かっていない。
ただライオネスと共に、召喚獣レイスと戦ったこと、そして彼の父を、多くの部隊員を助けられなかったことだけは覚えている。
意識が戻った時、エイケルナル大陸から中央大陸への玄関口となっている地域、アンバーステップ平原の拠点の病室に彼は居た。
フィルは慌てて部隊の人間を確認したが、あの戦場から生き残ることができたのは、彼自身を含めて本当に数名だった。

結局、ハンナハンナ島の拠点は陥落し、その領域は反乱軍の手に落ちた。
ハンナハンナ島の占領に成功した反乱軍は、すぐさま中央大陸のゲブランド領への侵攻を開始した。
その勢いは全く以て止まることはなく、中央大陸のゲブランド領の全域が戦場になるのも時間の問題だろう。

病室のベッドで横になっていたフィルは、看護師の人に言われて身体の包帯を外す。
あの時の戦場の傷も既にほぼ完治し、今は問題なく身体を動かせるようになった。

病室のベッドから降りたフィルは、父が亡くなる直前に言っていたことを、ふと思い出した。

「ラナス城跡地に行くんだ」

ライオネスは、息も絶え絶えになりながらも言葉を続けていた。

「私の知り合いが、必ずお前の力になってくれるはずだ」

それを伝えた後、彼の容態は悪化し、まもなく前線の病院で息を引き取った。
あの、既に荒廃しきったラナス城跡地に、一体何があるというのか……

着替えを済ませたフィルは、父の被っていた、羽根つきの青いソフトフェルトハットを手にとって、病室を後にした。

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